2024年空き家の増加が引き起こす社会問題
「空き家」のマイナス面だけでなく、前向きにとらえて活用することで社会全体が良くなればいいな…と考えます。
1. 空き家問題の現状と背景
空き家問題とは、使われなくなった家がそのまま放置されている状況のことを指します。日本では、この空き家の数が年々増加しており、2024年にはさらに深刻な問題となっています。
2023年時点で、日本の空き家総数は900万戸に達し、過去最多を記録しました。これは2018年の849万戸から51万戸増加したことになります。特に問題となるのは、賃貸・売却用および別荘などを除いた「その他の空き家」で、2023年時点で385万戸に上り、2018年から37万戸増加しています。(参照①)
空き家が増える理由はいくつかあります。
まず、人口減少と高齢化です。日本では若者の数が減り、高齢者が増えています。多くの高齢者が亡くなったり、介護施設に移ったりすると、その住まいが空き家になります。また、若者が都市部に移住し、地方の家が空き家になるケースも多いです。さらに、少子化で家を相続する子供がいない家庭も増えています。こうした背景が重なり、空き家がどんどん増えているのです。
将来予測としては、野村総合研究所のレポートによると、空き家問題はさらに悪化する見込みです。
- 2028年:総住宅数6,884万戸、空き家数1,394万戸、空き家率25.5%
- 2033年:総住宅数7,106万戸、空き家数2,146万戸、空き家率30.2%
この予測が実現すれば、2033年には日本の住宅の3割以上が空き家となる深刻な事態に陥ることになります。
参照①:空き家ワンストップ相談窓口
2. 空き家増加が引き起こす社会問題
空き家が増えることで、いくつかの社会問題が引き起こされています。
- 治安の悪化: 空き家は人目が少なく、犯罪者にとって隠れ場所や犯罪の拠点になりやすいです。不法侵入や放火のリスクも高まります。
- 地域経済への影響: 空き家が多い地域では、地価が下がり、地域全体の活気が失われます。商店やサービス業も衰退し、地域経済が悪化する原因となります。
- 衛生問題: 長期間管理されていない空き家には、ゴミが不法投棄されたり、害虫や害獣が住み着いたりすることがあります。これは周辺住民にとって大きな迷惑となり、健康被害を引き起こす可能性もあります。
- 自然災害リスクの増加: 管理されていない空き家は、火災や倒壊のリスクが高まります。特に地震や台風などの自然災害が起きた際に、放置された空き家が倒壊して周辺の住宅や道路を塞ぐといった二次災害を引き起こす恐れがあります。
3.空き家問題の深刻化がもたらす長期的な影響
空き家が増えることによる影響は、一時的なものに留まりません。長期的には、地域社会全体に深刻な影響を与えます。
- 地域コミュニティの崩壊: 人々が集まって住むことで成り立つ地域コミュニティが、空き家が増えることで崩壊していきます。住民が減り、地域のつながりが薄れていくのです。
- 若年層の地域離れと人口減少の加速: 地域の魅力が失われると、若い世代がその地域に住みたがらなくなります。その結果、さらに人口減少が進み、地域の未来がますます暗くなります。
- 地方自治体の財政負担の増加: 空き家が増えることで、地方自治体もその管理や対策に追われ、財政負担が増大します。これは、他の公共サービスへの予算削減を招くなど、地域全体に悪影響を及ぼします。
4.空き家対策の現状と課題
空き家問題に対して、政府や自治体はさまざまな対策を講じています。しかし、その取り組みには限界があります。
- 政府や自治体による取り組みには、空き家のリフォーム補助金の提供や、空き家バンクを活用した活用促進策などがあります。
- しかし、こうした対策だけでは空き家の増加に歯止めをかけることは難しいです。予算や人手が限られていることや、空き家所有者の意識の問題も課題です。
また、民間セクターもこの問題に取り組んでいます。不動産会社が空き家のリノベーションを行い、新しい居住者に提供するケースもありますが、それでも空き家問題の根本的な解決には至っていません。
5.今後の展望と解決策
空き家問題を解決するためには、持続可能な空き家活用方法を考える必要があります。
- リノベーションや再利用: 空き家をリノベーションして、新しい用途に変えることが考えられます。例えば、地域のコミュニティスペースやシェアハウスとして活用するなどです。
- コミュニティとの連携: 地域の住民や団体と協力し、空き家を使った新しい事業やプロジェクトを推進することも有効です。
- 法改正や政策の見直し: 空き家の所有者に対する税制優遇措置の見直しや、空き家を放置した場合の罰則強化など、法律や政策の改正も必要です。