空き家・空き地の利活用を考えてみる
古民家には現代的な住宅には無い良さがある一方、立地やコスト面、周辺環境などにおいて単体では簡単に解決できない問題をかかえていると感じます。
壊してしまうのは勿体ないと思う一方で、手入れされずに朽ちてしまい、近隣に迷惑をかけるなどそれも問題になってしまします。
1.はじめに
近年、空き家や空き地の増加が社会問題となっています。
空き家は、総住宅のうち13.6%(2018年住宅・土地統計調査)となり、空き家の存在は近隣や地域に良くない影響を与えているのが現状です。
また、空き地も増えています。
日本全体で少子高齢化が進み、都市部への人口集中が続く一方、地方では過疎化が進んでいます。その結果、地方都市や農村部を中心に、管理されずに放置される空き家や空き地が増加しているのです。
そして、空き家・空き地ともに管理などが適正に行われていない、あるいは所有者が不明の不動産が存在しています。
空き家や空き地が増えると、地域社会や所有者にとってさまざまな問題が生じます。
例えば、治安の悪化や景観の損なわれ、さらには建物の老朽化による事故のリスクも増します。また、所有者にとっては、使用していないにもかかわらず維持管理費や固定資産税などの費用負担がかかるため、大きな負担となります。
こうした問題を解決する手段の一つとして、空き家や空き地を有効に活用することが挙げられます。
利活用によって地域の活性化を図ると同時に、所有者にとっても新たな収益源を得るチャンスとなるのです。
2.空き家と空き地の利活用方法
空き家や空き地は、そのまま放置せずにさまざまな形で有効活用することで、新たな価値を生み出すことができます。以下では、具体的な利活用の方法をいくつか紹介します。
リノベーションによる賃貸化
古民家や空き家をリノベーションして賃貸物件として活用する方法は、人気のある利活用の一つです。古い家を改修して、賃貸住宅やシェアハウス、民泊施設として活用することで、新たな住民や観光客を呼び込むことができます。
シェアスペースとしての活用
空き家や空き地をシェアスペースとして活用する方法も増えています。例えば、コワーキングスペースやシェアオフィス、地域のイベントスペースとしてリノベーションを行い、地元の住民やクリエイター、フリーランスの方々に提供することで、地域内での交流やビジネス活動を促進できます。
特に、地域のコミュニティを活性化させたいと考える場合には、空き家を活用したコミュニティカフェやアートスペースなどのアイデアも有効です。これにより、地域の魅力を高め、新たな住民や観光客の集客にもつながります。
農業や家庭菜園のための空き地利用
空き地を市民農園や家庭菜園のスペースとして活用するのも、地域のコミュニティ形成に役立つ方法です。特に都市部での農業や家庭菜園の需要が高まる中、空き地を農作物の栽培場所として提供することで、地域住民が農業体験を楽しむ場を提供できます。
これにより、地元の人々が自然と触れ合い、健康的なライフスタイルを楽しむ機会を増やすことができます。また、収穫した農作物を地域のイベントで販売するなど、地域経済の活性化にも寄与することが期待できます。
太陽光発電やエネルギー事業への活用
空き地を太陽光発電などのエネルギー事業に活用する方法も注目されています。特に日当たりの良い広い空き地は、太陽光パネルを設置するのに適しており、再生可能エネルギーの供給源として利用できます。
このような取り組みは、環境に優しいエネルギー供給の実現に貢献し、地域のエネルギー自給率向上にもつながります。また、発電した電力を売電することで、収益を得ることも可能です。ただし、エネルギー事業を行うには、法規制や地元の協力が必要となるため、事前にしっかりと調査することが重要です。
3.利活用の成功事例紹介
・地方都市での成功事例
長野県の古民家再生プロジェクト 長野県では、古民家をリノベーションして民泊施設やカフェとして再利用する動きが広がっています。特に観光地として知られるエリアでは、伝統的な日本家屋を活かした宿泊施設が、外国人観光客にも人気です。古民家の趣を残しつつ、現代的な快適さを取り入れることで、リピーターを増やし、地域の観光収入にも貢献しています。
鳥取県の空き家利活用流通促進事業鳥取県のある町では、過疎化が進む地域で空き家を活用したシェアハウスを開設しました。これにより、若者や移住希望者が地域に定住するきっかけを提供し、地域の活性化に成功しています。自治体や地域住民と協力して空き家のリノベーションを進めることで、住みやすいコミュニティの形成にもつながっています。
・個人の成功事例
空き家をカフェに改装して地域の交流拠点に ある個人の事例では、使われなくなった実家を改装し、カフェとしてオープンしました。このカフェは、地元の人々が集まる場所として人気を集め、観光客も訪れるスポットに成長しました。カフェの経営だけでなく、地元産の食材を使った料理を提供することで、地域農業との連携も実現しています。
空き地を市民農園に変えた事例 東京近郊の空き地を利用した市民農園の事例では、週末農業を楽しむ都会の人々に人気の場所となりました。月額の利用料を払って区画を借りるシステムで、都市部の住民が気軽に農業を体験できる場を提供しています。空き地の有効活用と同時に、地域の新しい交流の場としても機能しています。
・企業や自治体による取り組み
自治体の空き家バンクを活用したリノベーション事例 多くの自治体が「空き家バンク」という制度を導入し、空き家の利活用を推進しています。例えば、京都府では、空き家バンクを通じて移住希望者に古民家を紹介し、リノベーション費用の一部を補助しています。これにより、若い世代の移住が進み、地域の人口減少に歯止めをかける効果が出ています。
企業が空き地を活用した太陽光発電事業 企業による太陽光発電の例として、愛知県のある企業が使われていない広大な空き地を利用して太陽光パネルを設置し、発電事業を展開しています。このプロジェクトは、地域のエネルギー自給率を高めるとともに、収益の一部を地域社会に還元する仕組みを導入しています。こうした取り組みによって、環境への貢献と地域経済の活性化を同時に実現しています。
4. 空き家と空き地を利活用する際の注意点
空き家や空き地を利活用することで、多くのメリットを享受できますが、実際に取り組む際にはいくつかの注意点があります。以下では、利活用を進めるうえで重要なポイントを紹介します。
・法規制や税制の確認
空き家や空き地を活用する際には、事前に関連する法規制や税制について確認しておくことが重要です。特に、空き家のリノベーションや建て替えを行う場合には、建築基準法や都市計画法などの法律が関わることが多いため、事前に自治体の窓口などで相談すると良いでしょう。
また、空き家の活用方法によっては、固定資産税や譲渡税の扱いが変わることもあります。
例えば、住宅用地として使用されていた場合、特例措置によって固定資産税が軽減されているケースがありますが、用途変更によって税率が変わる可能性があります。税理士などの専門家に相談し、適切な税務対応を行うことが求められます。
・管理と維持費の問題
空き家や空き地を利活用する際には、維持管理の手間や費用を考慮する必要があります。特に、リノベーションを行った場合でも、定期的なメンテナンスや管理が欠かせません。例えば、建物の清掃や設備の点検、周辺環境の整備など、細かな管理が必要になります。
管理の手間を減らすためには、地元の管理会社やNPO法人と連携し、適切な管理体制を構築することが有効です。
また、利活用にあたっては、予算の範囲内で無理のない管理計画を立てることが、長期的に安定した運営の鍵となります。
・近隣住民との調整
空き家や空き地を利活用する際には、近隣住民との関係性も重要です。特に、民泊やシェアスペースとして活用する場合には、利用者の出入りが増えるため、騒音や駐車場の問題などでトラブルが発生する可能性があります。そのため、事前に近隣住民に対して利活用の目的や計画を説明し、理解を得ることが大切です。
また、地域コミュニティとの連携を深めることで、利活用プロジェクトが地域の課題解決や活性化に貢献できることをアピールできます。
地域の意見を取り入れた利活用プランを作成することで、協力的な関係を築きやすくなり、成功につながるでしょう。
・資金調達のポイント
空き家や空き地の利活用には、初期費用や運営費用がかかることがあります。
特にリノベーションや設備投資を行う場合には、多額の資金が必要になるため、適切な資金調達手段を検討することが重要です。
銀行や信用金庫からの融資、自治体や国が提供する補助金や助成金の活用が代表的な方法です。
また、クラウドファンディングを活用して地域の人々から資金を集める事例も増えています。資金調達に成功することで、より多くの選択肢を持ち、魅力的な利活用プランを実現できるでしょう。
5. 空き家と空き地を活用するためのサポート・相談先
空き家や空き地を利活用する際には、専門家や支援機関のサポートを活用することで、スムーズにプロジェクトを進めることができます。以下では、利活用を進める際に頼りになる相談先やサポートについて紹介します。
・自治体や支援団体の活用
多くの自治体では、空き家や空き地の利活用を促進するためのサポートを提供しています。
例えば、自治体が運営する「空き家バンク」は、空き家の情報を登録して、購入希望者や賃貸希望者とマッチングするサービスです。これにより、空き家を活用したい人と所有者がスムーズに出会える環境が整っています。
また、自治体によっては、空き家のリノベーションや改修に対して補助金を提供する制度を設けている場合があります。
こうした補助金や支援制度を利用することで、利活用の初期費用を抑えることができます。自治体のホームページや窓口で情報を収集し、活用可能な支援策を検討してみましょう。
・専門家への相談
空き家や空き地の利活用には、不動産に関する知識やリノベーションの技術が必要になることがあります。そのため、不動産会社やリノベーション業者に相談することで、プロジェクトを円滑に進めることが可能です。
例えば、空き家の状態や市場価値を評価してもらい、最適な活用方法を提案してもらうことができます。また、リノベーション業者に相談することで、どの程度の改修が必要か、予算の見積もりを取得することができます。
さらに、税務に関する相談は税理士、不動産の法律面に関する相談は弁護士などの専門家に依頼することで、リスクを回避しながら利活用を進めることができます。
こうした専門家との連携は、トラブルを未然に防ぐためにも非常に重要です。
・地域のNPOやコミュニティ団体
地域密着型のNPOやコミュニティ団体も、空き家や空き地の利活用を支援しているケースがあります。これらの団体は、地域の特性や課題をよく理解しているため、地元のニーズに合った利活用の提案が可能です。
例えば、地域のNPOが主導する空き家リノベーションプロジェクトに参加することで、地域の住民と協力しながら空き家を活用できるチャンスが得られます。
また、コミュニティ活動の一環として、空き地を市民農園や地域のイベントスペースに転用することも可能です。
こうした団体との連携を通じて、地域社会に貢献しながら空き家や空き地の利活用を進めることができるため、地域の活性化にもつながります。
6.まとめ
空き家や空き地は近隣や地域に迷惑をかけることがあるのが実際です。
それゆえに、不動産所有者は責任をもって管理することが必要になってきます。
また、空き家や空き地の予防や利活用のためには、空き家や空き地の所有者、行政、不動産事業者、地域でのそれぞれの取り組みと共に、制度の再編が求められているのかもしれません。
つまりは、空き家や空き地問題は、長く当たり前に行われてきた、新築重視、建設重視、縦割りの体制などが現代の社会にあわなくなってきたことの現れかもしれません。
空き家や空き地の利活用は地域社会や所有者にとって多くのメリットをもたらします。
増え続ける空き家や空き地の問題は、単なる負担ではなく、工夫次第で新たな価値を生み出す資源に変えることが可能です。
リノベーションやシェアスペース、家庭菜園の提供、太陽光発電など、多様な活用方法を通じて、地域の活性化や持続可能なまちづくりを実現できます。
利活用を進める際には、法規制や税制、管理費用、近隣住民との調整など、いくつかの注意点に留意することが大切です。
また、自治体や専門家、地域のNPOなどの支援を活用することで、プロジェクトを円滑に進めることができます。
空き家や空き地の利活用には初期費用や時間がかかる場合もありますが、長期的には地域への貢献と新たな収益源を生む可能性があります。
もし自宅や所有地が空いているなら、一歩踏み出して利活用の可能性を探ってみてはいかがでしょうか。
空き家や空き地を新しい価値に変え、地域の未来をより良いものにしていく挑戦が、そこから始まるかもしれません。